本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
小説のつもりで書いた政府転覆のシミュレーションプラン
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(14)未遂に終わったクーデター・三月事件の衝撃
渡部昇一(上智大学名誉教授)
1931年、陸軍将校と民間右翼らが議会を占拠して内閣を総辞職させ、宇垣一成大将を首班とする軍事政権を擁立しようと計画したクーデター未遂事件があった。世にいわれる「三月事件」である。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第14話。
時間:11分28秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月27日
≪全文≫
 昭和6年(1931)の三月事件とは、陸軍将校と民間右翼らが計画したクーデターで、議会を占拠して内閣を総辞職させ、宇垣大将を首班とする軍事政権を擁立しようとしたものの、未遂に終わった事件である。クーデターを計画したのは、革新派青年将校たちの団体である「桜会」のメンバーで、中心人物には参謀本部第二部ロシア班長の橋本欣五郎中佐(のち大佐)やシナ各地の駐在武官を務めた長勇少佐(のち中将)などがいた。

 すでに述べたように、実は昭和5年(1930)にアメリカで成立したホーリー・スムート法によるところが大きいのだが、恐慌の影響で世間に失業者があふれ、農村は貧困に苦しむ状況を憂え、彼らは国家改造しければならないと考える。

 このクーデターには大川周明や清水行之助などの民間右翼が参加し、麻生久(日本労農党)や亀井貫一郎および赤松克麿(社会民衆党)らの左派の合流も予定されていた。

 彼らが立てたクーデター計画は大雑把なものではあったが、青年将校だけで国家改造を実現するのは難しい。そこで彼らが担ごうとしたのが宇垣陸相だった。

 その頃、宇垣陸相は中耳炎の手術をして入院していた。大東亜戦争の敗戦前年に総理大臣になった小磯国昭少将(のち大将)が軍務局長を務めていたが、彼の紹介で宇垣大将は大川周明と会談している。

 折しも浜口雄幸首相が「統帥権干犯問題」で右翼青年に撃たれて重傷を負い、幣原外相が臨時首相代理を務めていた頃である。ところが幣原外交はアメリカからはなめられ、シナ大陸でもなっていないという状況だったため、一度、右翼の人とも話してみたらどうかという趣旨で、小磯軍務局長は宇垣陸相を大川周明に会わせた。

 宇垣陸相はなかなか弁の立つ人だったそうだが、会談の中で「お国のために命を投げ出すことは軍人としての本望である」という話が出たことから、大川周明は「宇垣はやる気だ」と受け取り、青年将校たちに宇垣陸相の蹶起(けっき)は確実だと伝えられたようである。

 その後、大川周明は宇垣陸相に宛てて、改めて蹶起を促す手紙を出した。そこにはクーデターの具体的な計画がいろいろ書いてあったらしく、宇垣陸相も驚いた。自分はそんなつもりで話したのではない、軍は彼らとは絶対に関係を持たないという立場から、宇垣陸相は小磯軍務局長を通じて関係者にクーデターの中止命令を伝えた。

 ところがこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(12)自転車の青切符と「法と自粛」
【10minで考える】自転車の青切符と「法と自粛」
テンミニッツ・アカデミー編集部
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(5)ゴールドや暗号通貨への評価
ゴールドやビットコインへの評価は?…現代社会の写し鏡
養田功一郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄