本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
浜口雄幸撃たれる! カッとなった右翼青年が東京駅で発砲
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(8)「統帥権干犯問題」を煽ったマスコミ
渡部昇一(上智大学名誉教授)
1930年の統帥権干犯問題は、憲法には海軍の兵力を定めるのは天皇陛下と定めがあるにもかかわらず、軍縮条約を海軍軍令部の同意なしに決めてきたのは天皇の統帥権の干犯に当たる、というものだった。ジャーナリズムもこれをはやし立て、「統帥権干犯」は流行り言葉になり、ついにはカッとなった右翼青年が浜口首相をピストルで狙撃する。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第8話。
時間:8分22秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月24日
≪全文≫
 しかも当時の日本政府では幣原喜重郎が外相を務めており、非常に英米に遠慮していて、結局アメリカが日本移民を禁止するのをやめさせることができなかった。幣原は第一次・第二次加藤高明内閣(大正13年〈1924〉6月11日~15年〈1926〉1月30日)、第一次若槻礼次郎内閣(大正15年〈1926〉1月30日~昭和2年〈1927〉4月20日)、浜口雄幸内閣(昭和4年〈1929〉7月2日~6年〈1931〉4月14日)、第二次若槻礼次郎内閣(昭和6年〈1931〉4月14日~12月13日)で外務大臣を歴任している。

 「幣原外交」は協調外交だったとして、戦後褒められることが多いが、ある意味で非常に問題の多い外交だったといえる。アメリカとイギリスの意向を聞くのは非常に結構だが、彼らが当時何を考えていたかというと、「日本をこの辺で抑えておかなければならない」ということだったからである。

 第一次大戦の戦場になったヨーロッパが戦後に疲弊した結果、大儲けしたのは日本とアメリカだった。アメリカの儲けに比べれば日本はたいしたことはなかったが、当時の近代産業国家として、大戦の被害を被らなかったのは日本とアメリカだけだったのである。

 こうしたなか、日露戦争の前から20年以上存続し「日本外交の骨髄」といわれた日英同盟も大正12年(1923)に廃止されたのは先に見た通りである。

 また、台頭する日本の力を抑えるために、ワシントン会議(大正10年〈1921〉~11年〈1922〉)、ロンドン海軍軍縮会議(昭和5年〈1930〉)の2回の国際会議で海軍軍縮条約が結ばれている。

 ワシントン会議では主力艦(戦艦)の現有勢力比率が米:英:日=5:5:3、ロンドン海軍軍縮会議では日本の補助艦総トン数が対米6割9分7厘5毛、同じく大型巡洋艦が対米6割2厘などで合意した。

 第1回目のワシントン会議で戦艦を抑えるという条約は日本もまあまあ呑めたが、第2回目のロンドン海軍軍縮会議では、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦などの補助艦までも抑えることになり、大きな問題になった。というのも日本海軍は、太平洋を横断してくるアメリカ艦隊を迎え撃つ場合、潜水艦、航空機、水雷戦隊の夜戦などで漸減したあとに、戦艦による艦隊決戦を挑むという対米作戦構想を定めていたからである。

 そこで起こったのが、いわゆる統帥権干犯問題...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ