本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ワシントン会議から10年、こんなに日本が不利になるとは
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(11)ロンドン軍縮会議をめぐる大問題
渡部昇一(上智大学名誉教授)
1922年、日本海軍はワシントン会議で主力艦を制限され、1930年のロンドン海軍軍縮会議では、補助艦にまで大幅な軍備削減を求められ、合意するに至った。条約でこうした劣勢を押し付けられたことに、海軍軍令部を中心に反対論が巻き起こった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第11話。
時間:5分47秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月27日
≪全文≫
 海軍内部に問題があったとすれば、ロンドン軍縮会議をめぐって、海軍軍令部長の加藤寛治中将(のち大将)と、のちに海軍軍令部次長になる末次信正大佐(のち大将)を中心とする反対派=「艦隊派」と、財部彪大将、谷口尚真大将、山梨勝之進中将、左近司政三中将、寺島健少将、堀悌吉少将ら条約推進派=「条約派」の対立が起きたことであろう。

 艦隊派の加藤寛治中将は福井出身で、ワシントン会議の首席随員を務めた。また末次大佐は長州出身で、彼も全権委員随員としてワシントン会議に参加している。加藤中将は主力艦について対米7割の強硬論を主張し、末次大佐も条約成立に反対だったものの、加藤友三郎首席全権の決断により、対米英6割で一応の妥協を見ている。その意味で、のちに触れるように陸軍に比べたら、当時の海軍には派閥はほとんどなかったといっても過言ではない。

 ところが、そのワシントン会議から約10年が経ち、ロンドン海軍軍縮会議(昭和5年〈1930〉)の頃になると事情が大きく異なってくる。同会議で全権を務めたのが浜口雄幸内閣(昭和4年〈1929〉7月2日~6年〈1931〉4月14日)の海軍大臣だった財部彪大将である。財部大将は宮崎出身で、加藤友三郎内閣でも海軍大臣を務めた。

 先にも述べた通り、ワシントン会議では主力艦(戦艦)の現有勢力比率が米:英:日=5:5:3となり、ロンドン海軍軍縮会議では日本の補助艦総トン数が対米6割9分7厘5毛、同じく大型巡洋艦が対米6割2厘などで合意した。

 海軍大臣をトップに頂く海軍省が、海軍を代表してロンドン海軍軍縮会議に臨んだのだが、条約で日本がこうした劣勢を押し付けられたことに対して、海軍の作戦・用兵をつかさどる海軍軍令部を中心に、「これでは国防に責任が持てない」と反対論が巻き起こったのである。

 その中心人物である加藤寛治海軍軍令部長(当時)や末次信正海軍軍令部次長(当時)は、二人ともワシントン会議に随行した経験があるから、軍縮会議というものをよく知っていて、海軍の作戦を立案する人たちから見た場合、ロンドン海軍軍縮条約がいかに日本に不利に働いているかということを実感していたのだろう。

 かつてワシントン会議で主力艦が制限されたため、前述のように日本海軍は、太平洋を横断してくるアメリカ艦隊を潜水艦、航空機、水雷戦隊の夜戦で漸減するという、補助艦...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑