本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
恐慌は資本主義の必然―マルクスの予言が的中、評価急上昇
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(5)保護貿易と金解禁がもたらした昭和恐慌
渡部昇一(上智大学名誉教授)
1929年の世界恐慌により悪影響を与えたのは、その翌年に成立したアメリカのホーリー・スムート法だった。この法により、世界貿易は1年で半分になったといわれる。そして当時、奇しくもマルクスが「資本主義は必然的に恐慌に陥る」と唱えていたことから、あたかもその予言が的中したように捉えられていた。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第5話。
時間:4分44秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月24日
≪全文≫
 さらにそんな日本を、昭和5年以降、アメリカ発の大恐慌と、浜口雄幸首相・井上準之助蔵相が進めた金解禁によるデフレのダブルパンチが襲うのである。

 昭和4年(1929)10月、ウォール街のニューヨーク証券取引所で、株価の大暴落が始まった。1920年代を通じてアメリカでは株への投機ブームが起きており、株価はバブル的に値上がりしていた。ついに、そのバブルが弾けたのである。

 だが、世界経済、そして日本経済に、より悪影響を与えたのは、その翌年(昭和5年〈1930〉)にアメリカで成立したホーリー・スムート法であった。アメリカ国内の産業や農産物を守るため、2万品目について関税率を平均50%引き上げるというこの法案は、1929年の株価大暴落の前に議会に提案されていたものであったが、それが株価の大暴落の引き金になったことにより、より悲劇を拡大させた。各国も米国に対抗して関税を引き上げたため、一説によれば、このホーリー・スムート法の影響で、世界貿易が1年で半分になったといわれる。とくに日本の輸出品に対する関税率はきわめて高く、800%というものもあった。

 これは私の母の話だが、私が生まれた昭和5年頃の不景気を思い出すと、夜中に目が覚め、冷や汗が出るほど厳しいものだったらしい。

 しかも、時の井上準之助蔵相は政策を誤り、昭和5年(1930)に金解禁(金輸出解禁)および緊縮財政政策を進めてしまった。

 当時は金本位制で、各国の通貨は金との兌換によりその価値が保証されていた。紙幣の価値はきちんと担保されるが、逆にいえば紙幣の発行量は、その国が保有する金の量に左右されることになる。

 第一次世界大戦が始まると、欧米各国は金と紙幣の兌換を停止し、金の輸出を禁止した。戦争中はどうしても輸入超過になるから、金が流出してしまう。金が流出してしまったら、金と紙幣が兌換である以上、紙幣の発行量を減らさざるをえなくなる。それではとてもではないが戦争は継続できなくなってしまうからである。

 第一次大戦が終わると、再び欧米各国は順次、金の輸出を解禁していく。だが、日本は戦後不況や関東大震災などの影響もあり、なかなか金輸出解禁に踏み切れずにいた。国内外から金輸出解禁を求める声が高まり、ついにそれに向けて動き出したのが、タイミングの悪いことに大恐慌とほぼ同時になってしまったのである。
...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(4)10年後の物価…5つのシナリオ
5つのシナリオ分析…10年後の日本の物価水準はどうなる?
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(3)外交への懸念と経済復活への提言
「強い経済」へ――実現への壁は古い日本と同調圧力!?
島田晴雄
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
AI時代と人間の再定義(5)AI親友論と「WE」という概念の問題
AI親友論って何?「Self-as-WE」と京都学派の思想
中島隆博
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
おもしろき『法華経』の世界(9)「如来寿量品」と三身論
仏の寿命は無量で久遠に実在する…「如来寿量品」の神秘
鎌田東二
こどもと学ぶ戦争と平和(3)「小さな外交官」と少年兵の問題
外国が攻めてきたらどうすればいい?戦争と少年兵の問題
小原雅博
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
いま夏目漱石の前期三部作を読む(8)『門』の世界観と日本の近代化
伊藤博文暗殺…日本近代化で本当にいいことがあったのか
與那覇潤