本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
北清事変で日本軍は模範兵として世界の称賛を浴びたのに
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(9)ジョン・ダワーの「日本人発狂説」
渡部昇一(上智大学名誉教授)
マサチューセッツ工科大学名誉教授で、日本研究の第一人者だといわれるジョン・ダワー氏は、「驚くべきスピードで近代化を成し遂げた日本は、昭和に入った頃から狂い始めた」と、「日本人発狂説」を唱えた。この「発狂」の根源とは、果たして何なのか。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第9話。
時間:3分04秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月24日
≪全文≫
 MIT(マサチューセッツ工科大学)名誉教授で、日本研究の第一人者だといわれるジョン・ダワーという人物がいる。金沢の短大で教鞭を執り、東京の出版社に勤務してアメリカに帰国した人だが、彼は平気で、いわば「日本人発狂説」とでもいうべき議論を展開している。要するに、「驚くべきスピードで近代化を成し遂げた日本は、昭和に入った頃から狂い始めた」「あるとき突然発狂したようにおかしくなり、侵略国家になってしまった」という、戦時プロパガンダのような主張である。

 そのような主張に与する人は、残念ながら日本人にも多い。そのような人々が「発狂の一つの引き金」として挙げることが多いのが、この統帥権干犯問題である。司馬遼太郎氏も、日本がおかしくなったのは、いわゆる統帥権干犯問題が起こった昭和5年(1930)からだといっていた。

 だが司馬氏は、その統帥権干犯問題が起こった背景について述べたことはない。

 先にも記した通り、統帥権干犯は、明治憲法に首相の規定がなかったことに加え、何かの問題で閣僚が反対し、首相がそれをまとめきれない場合、閣内不一致で内閣総辞職しなければならなかったことに端を発している。

 たしかに、「日本人発狂説」を主張するダワー教授は、日本のことを十分に知らぬままに議論を展開しているように思われるが、われわれも、あえて当時の時代背景をもっと詳しく見ていく必要があるだろう。実際、外国人から見たら、日本はよくわからない国であるというのは事実だと思うからだ。

 外国人の目線から見れば、ある時点まで、近代の日本は実によく国際法を守る国であった。日清戦争(明治27年〈1894〉)でも、高陞号事件(英国旗を掲げつつ清国兵を輸送していた高陞号を、日本海軍が撃沈した事件)の折の東郷平八郎の処置が見事に国際法に適ったものだったために、列強諸国が舌を巻いたことなどは、その端緒に当たるものであろう。扶清滅洋を掲げて義和団が反乱を起こした北清事変(明治33年〈1900〉~34年〈1901〉)では、日本軍は模範兵として世界の賞賛を浴びている。それゆえ、あのイギリスが、他のヨーロッパ諸国とは締結しなかった対等の同盟関係を日本と結ぶという前代未聞の出来事につながり、当時の世界を驚かせたわけである。

 ところが、ダワー氏流の議論でいえば、そこから30年経つか経たないかのロンドン条約...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(2)戦争省とチャーリー・カーク暗殺事件
チャーリー・カーク暗殺事件とは?その真相と政権への影響
東秀敏
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ