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DATE/ 2015.08.25

今こそ就職・転職のチャンスといえるワケ

 アベノミクスの影響で、求人難による企業の倒産件数が増加している。倒産件数そのものは減っているので、仕事が増え、人手不足が深刻化しているということだ。

 現在、選ばなければ仕事はあるという状況だ。選んだとしても、労働者にとって前よりも有利な状況は生まれている。求人の条件にあるスキルや経験が多少足りなくても、面接に通ってしまう確率は上がっていると考えられる。雇われる側にとってはまさに理想的な環境だ。

 この理想的な状況は、一体いつまで続くのだろうか?

子育て中の親が働きにくいのと、少子化はつながっている

 人手不足の理由は、何もアベノミクスによるものだけではない。少子化、高齢者の大量退職、子育て支援不足が大きく影響している。

 子育て中の母親が職場復帰しやすくなったり、子育てをしながらでも働ける環境は少しずつ整いつつあるが、遅い歩みだ。現在の状況が短期間のうちに劇的に改善するということは期待できないだろう。

 そもそも、母親にばかり負担を押し付けている現状というものが問題で、男性が育児休暇を積極的にとれる環境になっていかないと、社会全体の意識も変わっていかないだろう。

 このままでは、ますます少子高齢化が進み、日本の労働人口は減っていく。

高齢者は大丈夫か

 一方、高齢者の活用という点ではもう少し歩みは早いと言える。日本人の平均健康寿命は70歳を超えているので、60代ならまだまだ体力的には働ける人も多い。定年を65歳まで延長する企業も増えてきた。

 60代で働きたいと希望する人は半数以上。その7割が実際に働いている状態だという。もし新しいスキルなどを身につけられる環境が整ったら、さらに雇用は進むだろう。

ITの発達が労働力を補う?

 子育て中の親が働ける環境ということなら、最近はクラウドソーシングも注目されている。人を雇わず、案件ベースで、仕事を依頼する仕事だ。企業が、子育て中の母親や、会社に縛られない自由な働き方をしたい人、副業として仕事を請け負う人などに発注するケースが多い。

資料作成や翻訳、ロゴや画像のデザインなど、PCで済ませられる仕事なら、人を雇わずクラウドソーシングで済ます企業も増えてきた。

市場規模も急拡大中で、2011年から2013年にかけては約2.4倍の伸びを見せた。その後も前年比1.5倍のペースで成長すると予測されていて、2017年には1000億円を軽く超える市場となることが予測されている。

このような働き方が増えたら、企業の人手不足はだいぶ解消されるだろう。クラウドソーシングをディレクションしたり、クラウドには出せない情報を扱ったり、スキルを持っている社員だけが残るということもあり得なくはない。

ロボットの発達も進んでいる

 人間に代わって働くロボットの発達も顕著だ。日本人にとっては、ドラえもんに代表されるように、人間の友達という意識が強いが、元々ロボットという言葉には「強制労働」という意味が込められていると言われている。つまり、人間に代わって働く存在がロボットなのだ。

 実は、日本政府は今年度を「ロボット革命元年」としている。19年度までの5か年計画で1次産業、2次産業はもちろん、サービス業である3次産業にもロボットの導入を進めていくのだという。

 先日Pepperを発売したソフトバンクの孫正義氏もこのような旨の発言を行っている。

 「ロボットは3人分働き、月給は1万7千円で済む」

 3人分とは24時間働くということだ。このようなロボットが大量に導入されたら、人手不足はあっという間に解消されるだろう。移民の必要性もなくなるかも知れない。

 しかし、同時にそれはあなたの仕事が危うくなるということでもある。

 クラウドソーシングやロボットの発達が進む現在、好景気、不景気にかかわらず、根本的に労働力不足を補う環境はできつつある。ひょっとすると、これからの歴史の中で、今が最も就職、転職のチャンスに恵まれた時代なのかも知れない。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授