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外来文化によって日本の神信仰はどのように強化されたのか

日本文化を学び直す(10)外来文化と日本の神信仰

田口佳史
東洋思想研究家
概要・テキスト
日本は古代より独自の神信仰を持っていたが、それは外来文化の伝来によって薄れるどころか強化されていった。老荘思想の影響で神信仰は宇宙的広がりを持ち、儒教の思想が冠位十二階に採り入れられ、仏教が入ってくると政治と結びついていく。そして、遅れて入ってきた禅が、日本の鋭い感性と深い精神性を発展させることになる。(全11話中第10話)
時間:10:41
収録日:2020/02/05
追加日:2020/11/18
≪全文≫

●外来文化によってむしろ強化された日本の神信仰


 しかし、いくら何でも外来文化が入ってきてしまえば、そういうもの(日本文化の根本)も薄れるんじゃないのか。外国人からよく指摘されるものなんだけど、「いや、そうじゃないんだよ。もっと強化されたんだ」と答えると、みんな、「えっ、ほんと?」と言います。強化されたのはなぜなのかというところへ話を進めていくと、日本というもののあらわな体質というものがよく見えてくるんです。

 まず、外来文化というものを少し説明すると、513年に五経博士、段楊爾(だんように)という人が儒家の思想を持ってくるんです。だから、儒家の思想というものは仏教伝来よりも25年ぐらい早かったんですね。そのもっと前に道家の思想、すなわち老荘思想が入ってきたと言われているけど、これははっきりしない。でも、前に入ってきたということは確かです。そして、皆さんご存じの、538年が仏教伝来です。ですから、513年から538年までのこの間に外来文化が日本へ入ってきたわけです。


●冠位十二階と儒教の思想「仁礼信義智」


 ではそうした外来文化をどのようにわれわれの先祖は受け取ったのか。その最大のものが冠位十二階です。冠位といえば、要するに国を司っている役人のポジションを決定するという、非常に国を象徴する部分です。その冠位に早くも儒教の仁義礼智信が採り入れられているということで、そういうものは注目したほうがいいと思うんです。

 すごく面白いのは、その順番です。これはあまり強調されて伝わっていないので「冠位十二階? 仁義礼智信のことね」といって流されてしまいがちですが、実は一番高いポジションが徳で、続いて仁義礼智信かというと、そうではないんです。そこが面白いところなので、徳の次は仁、ここまではいいです。その次は、礼信義智の順番なんです。

 これは何なのか。ということで、よく調べてみたら、いろんな説があるんですね。けれども、次に挙げる説が有力ではないかと。十二階について、今六つ挙げたわけですが、上下に分かれていますから、十二階になります。ではなぜ仁義礼智信じゃなくて、仁礼信義智なのか。

 私が考えたのが、当時、日本の国に足りないもの、重視すべきものと聖徳太子が思ったものから並べたのではないかということです。そうすると、まず仁が大切で、その次に礼を持ってきた。ということは、礼...
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