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よくわかる「バイデン政権」
アメリカ前大統領のドナルド・トランプ氏がよかれあしかれユニークな発言で世界を揺るがしてきたのに対し、コロナ禍の大統領選において史上最多の得票数で彼に変わったバイデン大統領の声はなかなか届いてきません。その人物像とバイデン政権が目指す政治について、調べてみました。
トランプ氏は既存権力の外側にいることを大きくアピールしましたが、バイデン氏は29歳で上院議員に当選以来、民主党上院議員として通算36年もの豊富な政治経験を重ねてきました。特に外交畑では長年上院外交委員会に属し、オバマ大統領の副大統領として対ロシアの核軍縮(START)を推進。ワシントンでは、粘り強さとブレのなさに定評があり、政敵からも信頼される人物像を形成しています。
といっても、バイデン氏の半生が順風満帆だったわけではありません。出身はブルーカラーの家庭で、少年時代は吃音を克服するために大変な苦労を重ねました。自分の名前「バイデン」がスムーズに言えず、「バイ・バイ」とからかわれたのは苦い思い出だといいます。
さらに、上院議員に初当選した年には人生最大の試練といえる不幸に出会っています。クリスマスの買い物に出かけた奥様と1歳半のお嬢様が交通事故で亡くなり、二人の息子も重体で入院してしまう悲惨さでした。
一時は議員職を返上しようとしたバイデン氏は、周囲の説得によりとどまり、地元デラウェアと首都ワシントンを毎日往復して、息子たちの見舞いを続けたといいます。長男のほうは結局40代で脳腫瘍により亡くなります。この治療をめぐって共和党の重鎮マケイン氏との間に親密な交流が生まれ、彼が脳腫瘍で亡くなった2018年に弔辞を読んだことも国民に大きな印象を残しました。
一つは「アメリカの魂を懸けた戦い」、すなわち世界を照らす「民主主義の灯台」になるということ。二つ目として、そのために「中産階級を再建する」ことを掲げ、三つ目に「一つのアメリカとして行動するための結束」を置いています。
これらの奥には、ホワイトハウスのホームページにも出てくる"America is an idea(アメリカは理念の国)"があります。アメリカに限らず、昨今の世界は両極端に分断され、「理念」が薄らいでいます。トランプ政権の4年間はその極みでしたが、真の民主主義を理念とする社会を再建するために、その中核である中産階級を尊重し、赤(共和党)の州も青(民主党)の州もない「一つのアメリカのために尽くす」ことは、勝利演説でも語られました。
特に問題視されているのは、社会の分断です。マイノリティが力を持つのに反比例して中産階級が凋落し、特に白人労働者階級は自分たちの問題を政府や社会のせいにして、「繁栄から取り残された」と感じる傾向が高まっています。トランプ前大統領が支持を集めたのは、まさにそうした「ラストベルトの層」でした。
こうした傾向に対し、レーガン政権以来の「小さな政府」を返上して、「大きな政府」として力を振るうことも、バイデン政権の方向性です。
行く手は決して平坦ではなく、彼の政治戦略は四つの挑戦に向かっているといわれます。「ナショナリズムの増大」「民主主義の後退」「中国やロシアなどの権威主義国家との抗争の激化」「テクノロジーの革命」という、いずれも強力な動向に対するものです。
さらにコロナ・パンデミックをはじめとして、数々の脅威がアメリカを襲っています。「気候変動」「サイバーとデジタル」「経済混乱」「人道危機」「過激主義とテロ」「核兵器など大量破壊兵器の拡散」が数えられます。
新型コロナによりたくさんの人が亡くなり、医療保険の重要性が見直されるなか、オバマケアを反故にしたトランプ前大統領の「損害」を取り戻そうと医療保険拡充を目指しています。
また気候変動については、2021年11月1日のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)でトランプ前政権によるパリ協定脱退を謝罪し、脱温暖化への努力を約束しています。
いずれも「理念」として立派であるにもかかわらず一足飛びには解消できなくなっているのは、アメリカの「価値」観があまりに多様化してしまったためでしょう。バイデン大統領の設定した高いゴールに四年間でどこまで挑戦が到達できるかは、日本にとっても他人事ではありません。今後の世界を動かす超大国の中枢として、アメリカの舵取りから目が離せません。
ジョー・バイデンとは、どんな人?
2021年1月20日に大統領に就任したバイデン氏は1942年生まれ。就任時の年齢78歳が歴代最高齢ということで危惧される一方、ジョン・F.ケネディ以来のカトリックの大統領として注目を集めました。トランプ氏は既存権力の外側にいることを大きくアピールしましたが、バイデン氏は29歳で上院議員に当選以来、民主党上院議員として通算36年もの豊富な政治経験を重ねてきました。特に外交畑では長年上院外交委員会に属し、オバマ大統領の副大統領として対ロシアの核軍縮(START)を推進。ワシントンでは、粘り強さとブレのなさに定評があり、政敵からも信頼される人物像を形成しています。
といっても、バイデン氏の半生が順風満帆だったわけではありません。出身はブルーカラーの家庭で、少年時代は吃音を克服するために大変な苦労を重ねました。自分の名前「バイデン」がスムーズに言えず、「バイ・バイ」とからかわれたのは苦い思い出だといいます。
さらに、上院議員に初当選した年には人生最大の試練といえる不幸に出会っています。クリスマスの買い物に出かけた奥様と1歳半のお嬢様が交通事故で亡くなり、二人の息子も重体で入院してしまう悲惨さでした。
一時は議員職を返上しようとしたバイデン氏は、周囲の説得によりとどまり、地元デラウェアと首都ワシントンを毎日往復して、息子たちの見舞いを続けたといいます。長男のほうは結局40代で脳腫瘍により亡くなります。この治療をめぐって共和党の重鎮マケイン氏との間に親密な交流が生まれ、彼が脳腫瘍で亡くなった2018年に弔辞を読んだことも国民に大きな印象を残しました。
バイデン政権が目指す「理念の国」
一貫した中道路線で知られるバイデン氏ですが、大統領としての政治的信条は三つ挙げられます。一つは「アメリカの魂を懸けた戦い」、すなわち世界を照らす「民主主義の灯台」になるということ。二つ目として、そのために「中産階級を再建する」ことを掲げ、三つ目に「一つのアメリカとして行動するための結束」を置いています。
これらの奥には、ホワイトハウスのホームページにも出てくる"America is an idea(アメリカは理念の国)"があります。アメリカに限らず、昨今の世界は両極端に分断され、「理念」が薄らいでいます。トランプ政権の4年間はその極みでしたが、真の民主主義を理念とする社会を再建するために、その中核である中産階級を尊重し、赤(共和党)の州も青(民主党)の州もない「一つのアメリカのために尽くす」ことは、勝利演説でも語られました。
特に問題視されているのは、社会の分断です。マイノリティが力を持つのに反比例して中産階級が凋落し、特に白人労働者階級は自分たちの問題を政府や社会のせいにして、「繁栄から取り残された」と感じる傾向が高まっています。トランプ前大統領が支持を集めたのは、まさにそうした「ラストベルトの層」でした。
こうした傾向に対し、レーガン政権以来の「小さな政府」を返上して、「大きな政府」として力を振るうことも、バイデン政権の方向性です。
バイデン政権の戦略は社会の分断に対抗できるか
バイデン大統領は「ケインジアン(ケインズ主義者)」と呼ばれながら、史上最大規模の予算を組んで数百万人規模の雇用創出を目指し、教育・保育などのセーフティネットを拡充しようとしています。行く手は決して平坦ではなく、彼の政治戦略は四つの挑戦に向かっているといわれます。「ナショナリズムの増大」「民主主義の後退」「中国やロシアなどの権威主義国家との抗争の激化」「テクノロジーの革命」という、いずれも強力な動向に対するものです。
さらにコロナ・パンデミックをはじめとして、数々の脅威がアメリカを襲っています。「気候変動」「サイバーとデジタル」「経済混乱」「人道危機」「過激主義とテロ」「核兵器など大量破壊兵器の拡散」が数えられます。
新型コロナによりたくさんの人が亡くなり、医療保険の重要性が見直されるなか、オバマケアを反故にしたトランプ前大統領の「損害」を取り戻そうと医療保険拡充を目指しています。
また気候変動については、2021年11月1日のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)でトランプ前政権によるパリ協定脱退を謝罪し、脱温暖化への努力を約束しています。
いずれも「理念」として立派であるにもかかわらず一足飛びには解消できなくなっているのは、アメリカの「価値」観があまりに多様化してしまったためでしょう。バイデン大統領の設定した高いゴールに四年間でどこまで挑戦が到達できるかは、日本にとっても他人事ではありません。今後の世界を動かす超大国の中枢として、アメリカの舵取りから目が離せません。
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