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インドは長期好景気に恵まれるのか?
インドでは2014年5月の総選挙で、モディ政権が発足した。ナレンドラ・モディ首相が掲げる政策で特に注目されるのは、製造業を重視する「メイク・イン・インディア政策」だ。高島修氏(シティグループ証券チーフFXストラテジスト)にお話を伺った。
かつてのアメリカや日本、近年の中国などは、農業を中心とした第一次産業から、工業を中心とした第二次産業が立ち上がり、最終的にサービス産業を中心とした第三次産業に移行していった。
インドはもともと第一次産業への依存度が高い中で、第二次産業の製造業あたりが伸びてくる前に、金融、建設、ITなど第三次産業を中心に伸びていった経緯がある。日本、アメリカ、中国などとは違う経済発展の道をたどったのだ。
1つ目は、何といっても労働資源となる人口の増加だ。全人口は現在約12億人。しかも人口は今後も増えていき、おそらく2030年代には中国を抜いて、世界第1位になると予想されている(2015年7月29日の国連予想では、2022年に中国を抜くと予想を前倒しした)。
2つ目は、人口がただ伸びるだけでなく、16歳から65歳までの生産年齢人口比率が上昇していき、ピークアウトと予想される2040年前後まであと25年もの人口ボーナス期が続く。
ちなみに、中国の生産年齢人口比率は、今ちょうどピークアウトしようとしているところだ。そのため、今後の中国の経済成長率は、今後7パーセントか、6パーセントに下方屈折するのではないかといわれている。
過去、日本やアメリカで生産年齢人口比率がピークアウトした時、すなわち日本は1990年頃のバブル崩壊、アメリカは2008年のリーマン危機の時には、どちらも大きな経済的転換が起こった。今の中国にも、このようなことが起こるリスクがあるだろう。
3つ目は、「ルイスの転換点」がまだ遠いことがあげられる。ルイスの転換点の「転換」とは、農村部から都市部への労働人口の移転のことだ。
前述の通り、産業構造上、インドは長い間、第一次産業に依存しており、労働人口は依然として5割近くが第一次産業に就業しているといわれている。つまり、農村部から都市部へと労働人口を移転させていく余地が大きいのだ。これがインドの人口動態上の強みといえる。
当然プラスの側面だけでなくマイナスの側面もあるが、悪状況に陥らないためには、経済発展、所得の向上が欠かせない。そういった中で、メイク・イン・インディア政策が持つ意義は大きい。
さらに、アメリカのエネルギー革命の影響もあり、資源価格が全般的に下がっている現状は、インドの課題であるインフラを拡充する絶好の投資機会といえる。
最近、中国が提唱している「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」が話題になっている。これに対抗して、これまでアジア世界の金融の中核を担ってきた日本・アメリカ主導の「アジア開発銀行(ADB)」が、アジアへのインフラ融資をより積極的に行っていく姿勢を見せ始めている。つまり、インドのインフラ投資におけるファイナンス環境も整ってきている。
10年、20年単位のロングストーリーではあるが、モディ政権がメイク・イン・インディア政策を推進するに当たっては、国内外ともにいい環境になっていると考えられる。今後のインドに目が離せないことは確かだ。
経済発展のプロセスが全く違ったインドの問題
インドは長く第一次産業に依存していたが、そこから製造業を飛び越えて、第三次産業が伸びてしまった。製造業が発展してこなかったことが、インドの中間層形成が遅れた理由の1つだといわれている。そこで今、モディ政権はここに注目し、製造業を成長させる政策を打ち出しているというわけだ。かつてのアメリカや日本、近年の中国などは、農業を中心とした第一次産業から、工業を中心とした第二次産業が立ち上がり、最終的にサービス産業を中心とした第三次産業に移行していった。
インドはもともと第一次産業への依存度が高い中で、第二次産業の製造業あたりが伸びてくる前に、金融、建設、ITなど第三次産業を中心に伸びていった経緯がある。日本、アメリカ、中国などとは違う経済発展の道をたどったのだ。
インドの人口、3つの強みとは?
インドの人口を考えるとき、強みとして3つのポイントが挙げられる。1つ目は、何といっても労働資源となる人口の増加だ。全人口は現在約12億人。しかも人口は今後も増えていき、おそらく2030年代には中国を抜いて、世界第1位になると予想されている(2015年7月29日の国連予想では、2022年に中国を抜くと予想を前倒しした)。
2つ目は、人口がただ伸びるだけでなく、16歳から65歳までの生産年齢人口比率が上昇していき、ピークアウトと予想される2040年前後まであと25年もの人口ボーナス期が続く。
ちなみに、中国の生産年齢人口比率は、今ちょうどピークアウトしようとしているところだ。そのため、今後の中国の経済成長率は、今後7パーセントか、6パーセントに下方屈折するのではないかといわれている。
過去、日本やアメリカで生産年齢人口比率がピークアウトした時、すなわち日本は1990年頃のバブル崩壊、アメリカは2008年のリーマン危機の時には、どちらも大きな経済的転換が起こった。今の中国にも、このようなことが起こるリスクがあるだろう。
3つ目は、「ルイスの転換点」がまだ遠いことがあげられる。ルイスの転換点の「転換」とは、農村部から都市部への労働人口の移転のことだ。
前述の通り、産業構造上、インドは長い間、第一次産業に依存しており、労働人口は依然として5割近くが第一次産業に就業しているといわれている。つまり、農村部から都市部へと労働人口を移転させていく余地が大きいのだ。これがインドの人口動態上の強みといえる。
当然プラスの側面だけでなくマイナスの側面もあるが、悪状況に陥らないためには、経済発展、所得の向上が欠かせない。そういった中で、メイク・イン・インディア政策が持つ意義は大きい。
インドの外部環境
インドの外部環境を見ると、中国の生産年齢人口のピークアウトが、世界的な製造拠点の再編につながる可能性がある。これは非常に大きな話だ。そういった環境下において、インドでは生産年齢人口が増えていくことになるのだ。さらに、アメリカのエネルギー革命の影響もあり、資源価格が全般的に下がっている現状は、インドの課題であるインフラを拡充する絶好の投資機会といえる。
最近、中国が提唱している「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」が話題になっている。これに対抗して、これまでアジア世界の金融の中核を担ってきた日本・アメリカ主導の「アジア開発銀行(ADB)」が、アジアへのインフラ融資をより積極的に行っていく姿勢を見せ始めている。つまり、インドのインフラ投資におけるファイナンス環境も整ってきている。
10年、20年単位のロングストーリーではあるが、モディ政権がメイク・イン・インディア政策を推進するに当たっては、国内外ともにいい環境になっていると考えられる。今後のインドに目が離せないことは確かだ。
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