明治維新から学ぶもの~改革への道
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蝦夷地を占領した「榎本政権」の二つの誤算
明治維新から学ぶもの~改革への道(6)榎本海軍と北海道の戦い
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

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榎本武揚率いる旧幕府海軍は、戊辰戦争の最後を飾る一幕となった。勝海舟から東北戦争に関わらぬよう忠告された榎本は仙台に立ち寄り、多数の将兵を収容し、蝦夷地へ向かう。瞬く間に函館を占領した彼らは、事実上の政権を成立させるが、二つの誤算が「天皇政権の藩屏」を目指す榎本軍の行く手を阻む。(2018年11月13日開催島田塾講演「明治維新とは:新たな史観のこころみ」<後編>より、全22話中第6話)
時間:5分28秒
収録日:2018年11月13日
追加日:2019年4月27日
≪全文≫

●榎本海軍、品川沖から仙台へ


 一方、江戸開城の4月11日夜半に品川沖から脱走した榎本武揚率いる旧幕府海軍は何をしていたか。

 4月19日になり、東海道先鋒総督府から田安(徳川)慶頼に、「主家を思う至情に感心」して榎本の願いを入れ、軍艦のうち4隻を榎本に与えます。他の4艦は朝廷に差し出すように、と譲歩があります。榎本は、それを受け止めますが、追撃される可能性を低めるため、性能の良い艦は引き渡しを避けようとします。勝海舟が間に入って調停したため、これは事なきを得ます。

 榎本たちはこの後、蝦夷地へ向かいますが、一枚岩の体制ではありませんでした。多くの者が東北諸藩を助けたいと願っていたからです。しかし、勝が榎本に忠告を与えます。

 「会津藩を信ずるな。東北諸藩は勝つ見込みがない。東北諸藩と同調して政府軍と戦うと朝敵行為になる。徳川家の存続が保障された今、それは意味のない行為だ」

 そのため、榎本はある意味で、東北を見捨てることになります。ただ、9月初旬に榎本艦隊が仙台に入港したため、多くの将兵がそれを聞きつけて、同乗を願いました。榎本一行は2500名にも膨れ上がります。


●蝦夷地を占領した「榎本政権」の抱いた理想


 明治元年10月20日、榎本艦隊は、雪に埋もれた蝦夷地の鷲ノ木に到着します。あえて函館から400キロも離れた寒村を選んだのは、函館にいる政府の守備隊を刺激しないためでした。上陸した榎本軍は二手に分かれます。今は温泉で著名な湯の川方面へ向かったのは新選組の土方歳三隊、大沼方面へは大鳥圭介隊です。この頃、函館の政府軍は約1500名による防御体制を取っていました。

 函館の戦争は政府軍の夜襲に始まりますが、榎本軍はたちまち政府軍を圧倒します。なんといっても新選組をはじめとする歴戦の勇者ぞろいであり、戦意の高い集団だったからです。五稜郭と函館を制圧し、陸軍部隊は多大な戦果を挙げます。ただし、海の方では得意の軍艦が嵐にあったり座礁したり、あまり見る影がありませんでした。

 とはいえ1カ月ほどで、榎本軍は蝦夷地を占領し、榎本王国建設のための行政機構を整備します。事実上の「榎本政権」がここに誕生したわけです。ただし、榎本政権は独立国をつくるつもりはありません。榎本が求めていたのは、天皇の政権を認め、いわば蝦夷地の徳川藩として、天皇政権の藩屏の地位に甘んじることでした。
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