明治維新から学ぶもの~改革への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
福沢諭吉の西郷隆盛に対する痛切な評価
明治維新から学ぶもの~改革への道(19)福沢諭吉と明治政府
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
政情定まらない明治最初の10年間に、福沢諭吉の慶應義塾における教育と著作による知的活動は、世の注目を集めた。明治国家の構築に参画していく福沢と明治政府首脳との関係は複雑だったが、西郷隆盛には同情的で、西南戦争直後、賊とされた彼を評価する文章を残している。(2018年11月13日開催島田塾講演「明治維新とは:新たな史観のこころみ」<後編>より、全22話中第19話)
時間:4分08秒
収録日:2018年11月13日
追加日:2019年5月4日
≪全文≫

●明治の元勲たちと福沢諭吉


 福沢諭吉は、西南戦争前後からようやく政府の動きに付き合い始めるようになります。明治六年政変の折、大久保利通は政府改革のために伊藤博文に立憲政体に関する意見書を作らせますが、その時に「福沢を一員に加えたらどうか」と提案して、「福沢が入ると影響が強すぎる」と、伊藤に退けられています。

 台湾出兵を経てリーダーになった大久保は、大阪で木戸孝允、板垣退助との三者会談をします。征韓論で政府を去った板垣を入れ、台湾出兵で政府を去った木戸を迎え入れ、新しい体制で旅立つわけです。

 その後、大久保と意見が合わなくなった板垣は民権運動の方へ進んでしまいますから、残った木戸が批判にさらされました。福沢はなぜか木戸と気持ちが合ったようで、さまざまに激励を送っています。木戸は福沢の親切に感謝しつつ、自分は国家のために尽くすと言ったようです。

 さて、福沢が初めて大久保と会ったのは明治9(1876)年で、この時のことは記録に残っています。大久保は福沢に対して、「天下流行の民権論も宜し、されど人民が政府に向かって権利を争うなら、またこれに伴う義務もなかるべからず」などと言ったそうです。福沢は自分の記録の中で、それは「暗に私を目して“民権論者の首魁”と認めたかのよう」だったとし、次のように返しています。

「国民には政権と人権がある。政事は政府が自由にやればよい。しかし人権については譲ることができない。官吏が平民を軽蔑するのは封建時代の武士が百姓町人に対するのと同じで良くない。自分が争うのは人権の方だけである。しかし、いつか政権の議論も盛んになり、大騒ぎになることもあるだろう。そのとき自分は決してその動きに加わることはなく、『今日、君(大久保)が民権家と鑑定を付けられたる福沢がかえって着実なる人物となりて、君らのためにかえって頼もしく思われる場合もあるべし。幾重にも安心あれ』と述べた」(『福沢全集緒言』)

 大変えらい人物だと思います。


●「天下の人物」西郷に対する福沢の痛切な評価


 西南戦争になると、征韓論には反対だった福沢は、西郷に深い敬愛の念をもって事態を注視したようです。西南戦争が終わり、西郷が城山で自決した直後に、福沢は『明治十年丁丑公論』という定期的に出版している随筆集に、こう書きました。要点は二つ。

1.抵抗の精神は重要である。維新以...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦