明治維新から学ぶもの~改革への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
明治維新による士族階級の大リストラ「秩禄処分」
明治維新から学ぶもの~改革への道(12)財政基盤の確立と士族解消
歴史と社会
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
新政府の財政基盤は劣悪で、当初の税収は御用金と太政官札による借入で賄われた。全国の収入を中央に集中させる方策として明治4(1871)年に廃藩置県、続いて地租改正が行われ、財政構造の安定が図られる。そして秩禄処分により武家の家禄は廃止、武家社会が清算されてゆく。(2018年11月13日開催島田塾講演「明治維新とは:新たな史観のこころみ」<後編>より、全22話中第12話)
時間:9分05秒
収録日:2018年11月13日
追加日:2019年4月27日
≪全文≫

●御用金と太政官札鋳造から廃藩置県・秩禄処分へ


 財政基盤の確立と士族解消は、明治政府の重要事項でした。新政府の財政は、ほとんど一文無しといえる劣悪さだったのです。倒幕必要経費は、御用金(300万両)、劣悪な太政官札鋳造(600万両)で賄いました。太政官札は交換できないお金であるため、由利公正は「紙くずで俺は天下を取った」と豪語しています。後に彼は解任されていますが、裏付けのない借り入れで激動期を乗り切ったのは大変な功績です。

 政府の税収も、御用金と太政官札の借金で賄われました。当時は暗殺が横行して、横井小楠や大村益次郎が殺され、全国に政情不安が広がりました。政府は精力的に全国から所領召し上げを行いますが、八百数十万石にしか届きません。

 悩み抜いた末に全国の収入を中央に集中させる方策が、明治4(1871)年の「廃藩置県」でした。さらに明治9(1876)年には「秩禄処分」が行われます。これは、要するに公務員を全員解雇するというような処置のことで、その報酬を公債で受け取らせるというものでした。


●維新政府の膨大な赤字と高利の外債発行


 紙幣の増発によるインフレは、財政基盤の弱い新政府を明治初年からずっと悩ませていました。由利が解任された後も、明治6(1873)年7月に陸奥宗光が起草した地租改正により財政の基礎が固まるまで、維新政府は歳入確保目的で大量の紙幣発行を余儀なくされていたのです。

 維新政府の債務は、直接的に維新に関わったものだけではありません。全国政府になると各藩を代表するため、各藩の発行した藩札を引き継いだ結果としての借金もありました。また、幕府の横須賀製鉄所に属する韮山反射炉、水戸藩が設置した石川島造船所、佐賀藩の築造した築地反射炉、薩摩藩がいち早く進めた工場群(集成館事業)など、明治政府の官営工場のもとになったわけですが、一旦は政府が引き取ったため、借金が莫大に膨れ上がったのです。

 明治政府の膨大な借金は、国内資金への圧迫から高金利を招くことになります。明治14(1881)年に松方正義が蔵相に就任して財政健全化政策を取りますが、それが効果を現す以前は非常な高金利が続いていたのです。

 明治3年には、鉄道を建設するためにイギリスで公債(クーポン債)を発行しますが、年利は9パーセントにも上りました。エジプトやルーマニアの国債7パーセントを上回っています。こ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留