明治維新から学ぶもの~改革への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「廃藩置県」の一声で無に帰してしまった兵制改革
明治維新から学ぶもの~改革への道(9)紀州・和歌山藩の挑戦
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)

講義一覧を見る▼
陸奥宗光らが立案した紀州・和歌山藩の兵制は画期的だった。四民平等の徴兵制、プロシア式の導入、弾薬製造の徹底など、薩長に脅威を与えた改革は、紀州が敗者だったから取り得た策である。廃藩置県により夢破れた陸奥は、税制改革に辣腕を振るう。(2018年11月13日開催島田塾講演「明治維新とは:新たな史観のこころみ」<後編>より、全22話中第9話)
時間:8分10秒
収録日:2018年11月13日
追加日:2019年4月27日
≪全文≫

●四民平等の徴兵制とプロシア式による兵制改革


 陸奥はまず、津田出(いずる)という蘭学の先駆者を訪ねます。当時、欧米の兵制については日本の最高権威でした。彼の助言を得ながら抜本改革を行います。侍の家禄を20分の1に削減して財源を捻出するといった、思い切った案でした。

 明治2(1869)年、津田はプロシア式を採用しようと、カッピンというプロシア将校を雇います。同時に、士農工商を問わず、20歳になると全ての男子に徴兵を適用。兵役3年の後、第一予備役4年、第二予備役4年で、11年間服役せよというのです。

 この軍隊が、廃藩置県で解散される頃にはすでに2万人になっていたといいます。兵の行進は全てプロシア式で、一糸乱れず正確な動きを展開します。弾薬製造所ではツンドネーデル銃用の弾丸が、ドイツと同様に毎日1万個ずつ製造されていました。

 この噂を聞き付けて、パークス英公使、デロング英公使、ブランドドイツ公使、薩摩からは西郷隆盛に促されて西郷従道と村田新八らが見学に来ていました。

 このような紀州(和歌山藩)の兵制改革は、実は明治維新の流れを決定的とする影響があったという説があります。つまり、廃藩置県も秩禄処分も徴兵制も、この藩の動きなしにはあり得なかったのではないか。それが岡崎久彦氏の観察です。


●中央の布告にも敢然と「四民平等」で論駁


 これに最も衝撃を受けたのは、おそらく薩長だったでしょう。この兵隊があれば、薩長の兵隊など問題にならないと、カッピンも陸奥自身も考えていました。いずれは紀州から10万の兵を出すことも不可能ではない。薩摩77万石、長州36万石といえども、万単位の軍隊を出すことは財政的にかなり難しいのです。

 紀州藩が敗戦国であり、一歩誤れば朝敵として藩が滅亡する危機にあったからこそできたことでした。禄が20分の1になっても、朝敵だから諦めもつくということです。戦勝国である薩長にはそんなことはできません。特に薩摩は士族の国で、戦士は士族だけに限られると考えていました。

 翌明治3(1870)年2月20日、兵部省(後の陸軍省)が、全国の兵制を統一すべしとして、各藩の常備兵規模を1万石につき1個小隊60名に限り、士族・華族以外から兵隊を徴集すべからずと布告します。これは、長州の奇兵隊とまったく思想を異にするもので、薩摩と長州のせめぎ合いの中、薩摩が主導権を握っていったことが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子