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幕末・明治維新から何を学べばいいのか?

明治維新から学ぶもの~改革への道(22)明治維新の評価をどう生かすか

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
明治維新から学ぶ具体的な方策とは、既得権益から新しい「草莽の志士」が活躍する時代への移行である。では、日本がそうした民衆の人材力を発奮させ、丸腰でも世界に尊敬される国になるためには何が必須なのか。(2018年11月13日開催島田塾講演「明治維新とは:新たな史観のこころみ」<後編>より、全22話中第22話)
時間:07:33
収録日:2018/11/13
追加日:2019/05/04
≪全文≫

●黒船のインパクトは、現在のGAFAにもまさる?


 では最後に、幕末・維新から何を学んだらいいかを話します。まず、国際情勢の認識と対応です。幕末、日本は鎖国攘夷と開国開化に分かれました。幕府は開国開化派、薩長は鎖国攘夷派でした。

 黒船のインパクトは、今でいうと宇宙船襲来や『E.T.』との遭遇のような感覚だったでしょう。あまりに巨大な格差です。ところが、幕府の対応は見事でした。江戸時代を統治した官僚制度は、260年間戦争をさせない仕組みですから、よくできていて、大変強固なものだったそうです。

 今の世界と日本で起こっていることは何か。ITとかAIの分野で、日本はGAFAに全然追い付かず、中国と比べても全然追い付きません。国際情勢が激変しています。戦後の安全保障体制は、65年たってもう命脈を終えている可能性があります。

 現代日本の政党、政府、経団連、経済・産業界は、成功体験を共有していて、まさに幕末における幕府そのものです。優秀な人が集まった精緻な体系ですが、しかし保守的であり、既得権をめぐる集団です。


●民族の「蓄積された人材力を発奮」させた幕末


 徳川幕府は既得権を死守しました。ペリーの来訪に対しては有能な官僚を総動員して、見事な外国交渉を行いました。革命勢力はそんなものは持っていないけれど、「攘夷」で民衆のエネルギーを誘導し、「尊皇」で正当化して戦いに挑んだのです。

 今、政治は既得権の政治で、政治家は大半が世襲になっています。新規人材が枯渇しているのです。官僚はシステムが非常に強固で、しかも忖度行政です。天下国家論などを聞くことはなく、探究心も乏しいでしょう。だから、人材は次々と政府を離れています。すでに末期的症状なのです。

 政府は、財界の方向性と既存システムの維持に固執してリスクを回避し、内部留保を蓄積しています。これは、優秀な人材を抱えているのにまったく動かない幕末の徳川体制と酷似しています。

 その時に民族の気概とエネルギーはどうなったか。岡崎久彦氏の説によると、「人材力が蓄積されていた。それを発奮させたのだ」となります。幕末の志士は、国を憂うる心と探究心に優れ、人物を求めて学びました。遠方でも、人物がいるとなれば、米を袋に入れて何里もの道も歩いて会いに行くのです。陸奥宗光は、それをやった。福沢諭吉もそれをやった。武士の知的蓄積です。

 薩...
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