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リーダーには「嫌なこと」を納得させられる力が必要である

真のやる気とは何か(6)どぶ板営業の徹底で理念が生きた

対談 | 執行草舟田村潤
情報・テキスト
組織というのは、決めたことをやり切ることで初めて成立する。それにもかかわらず、田村氏が支店長として赴任した高知支店は、実行力のない中途半端な状態だった。そんな中、「家に帰るな」「眠るな」という一喝によって、組織は徐々に良い方向に変わっていく。高知支店の奇跡は、厄介なもの、ドロドロしたものを徹底したからこそ、美しい理念をストンと腹に落とすことができ、人生を好転させることができた好例といえるだろう。(全14話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:07
収録日:2020/04/10
追加日:2020/08/07
キーワード:
≪全文≫

●リーダーに必要な力


執行 「高知の人に喜んでもらえる」というのは、きれいごとで、誰でもいうことなのです。でも、高知の人に喜んでもらうには、裏に隠れている汚いことをやらないと、「きれいなところ」に持っていけない。だから高知支店の人は、それを汚いと思わないで、理念のためにできたのだと思う。なぜなら、きれいなものは汚いものからしか生まれないのですから。

田村 ハンディばっかりだったのですが、理念を実現するためには、「自分のできることは、すべてやるんだ。不可能なことは何一つない。不可能を可能にすることが仕事だ」と、仕事の定義が変わった、と(高知支店の)全員がいっていました。そこに向かっている中で、すべてを受け入れるようになって、「そのうえでどうするか」という話になってきたので、「人生が変わった」と全員がいっていたんですね。

執行 宿命を受け入れることを知らないうちにできたのは、田村さんが指導者として優れていたということです。指導者には、嫌なものとか不幸なものを納得させられる力が必要なのです。だから、「みんなで良くなりたい」とか、きれいごとをいっている人は全部駄目。そうではなく、人の不幸を受け入れさせる力がある人が、人のやる気も引き出せるということです。

田村 良かったのは、いくら理屈でいっても人間は動けないですよね。会社の組織というのは「決めたことをしっかりとやり切る」ということが前提です。実行力がないと、話にならない。ところが最初、高知に行ったときに、これが全然できていなかったのです。

 それで、リーダーとメンバーで話しあってもらいました。とにかく大苦戦していましたから、ぼろ負けはしようがないけれども、「自分はこれだけはやった」ということを持ちたい。それで、「1年間かけてこれをやろう」ということをリーダーとメンバーとで決めてもらったのです。

 そして、月1回、(決めたことを)やったかどうかの確認をしました。振り返ってみて、これが非常に良かった。そうすることで、メンバーが現場に出るようになったのです。現場に出て行って、何となくお客さんとの関係ができたときに「この仕事は高知の人を幸せにするのだ」という理念が導入された。このことを、最初の3カ月間は全然わからなかった。でも、動いていると、頑張れば、お客さんが喜んでくださって、商品を扱ってくれる。それなら、もっと頑張ろうとやっているうちに、この理念がストンと腹に落ちたと、メンバーはいっていました。

執行 嫌なことをやったのでしょう。理念というのは美しい。その美しいことは、嫌なことをやっていると、腹に落ちてくる。要はそういうことなのです。


●なぜ部下たちに「家に帰るな」「眠るな」といえたのか


田村 一度、私は「家に帰るな」「眠るな」と指示したことがありました。今だと、ハラスメントといわれてしまうのですが、「リーダーとメンバーとで何があってもこれをやると決めたのだろう。たとえば、ひと月に飲み屋さんを400軒回るとか。であれば、400軒回っていないなら、家に帰ってはいけない」という話です。決めたのだから、嘘をついてはいけない。だから、家に帰ってはいけない、眠ってはいけないのだといったのです。そうやって1回怒りました。

 そうすると、メンバーは「ああ、眠ってはいけないのだ」とびっくりしていました。そのようなことをいうリーダーは今までいなかった。今度のリーダーは本気だとメンバーが感じて、また回り出していく。そうして回り出していくと、身体でわかってくるのです。飲み屋さんを回るという活動は、だいたい4カ月もすると慣れてくる。

 もちろん、つらい活動です。1軒1軒裏口から行くのです。だいたい飲み屋さんというのは忙しい。仕込みの真っ最中で、「何しに来たんだ」と怒られる。そうすると、だんだん行かなくなってしまう。それでも、4カ月回っていると、慣れてきて、また回り出したのです。そうすると、また良い反応が出てくる。それで、良い関係ができてきたのです。

執行 キリンの営業の話を聞いていると、運命論の1つの理想だと思いますね。結局、キリンの理念が、ある意味で汚いどぶ板営業をやったことで生きる。その活動を田村さんがやったということですよ。

田村 確かに、良いところばかりだったら、売れる商品ばかりだったら、それで終わりだったでしょうね。

執行 やる気がある人でも駄目な人は、きれいごとしかいわないということです。いつも理念みたいなことをしゃべっている。「みんな幸せになりたいよね」などと。それを聞いていると、「ふざけるな、この野郎。まずはおまえが死ね」という気持ちになる。

田村 まずはやってみろという話ですね。

執行 そう。「おまえと一緒になりたくない」という感じなのです。

―― そこが面白いとこ...
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