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新しい社会保障制度には子育て・教育・雇用を組み込むべき

高齢化と財政危機~その解決策とは(20)新時代の社会保障政策のビジョン

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
これまでの社会保障は、大幅な社会構造の変化に伴い、すでに機能を停止している。これからの新しい社会保障制度には、年金・医療・介護に加えて、子育て・教育・雇用を組み込んでいかなければならないと、公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏は主張する。新時代の社会保障制度のビジョンとはどのようなものなのか。(全24話中第20話)
≪全文≫

●子育て・教育・雇用を社会保障に組み込むべき時代が来た


 これまでの年金、医療、失業保険、生活保護といった社会保障制度は、すでに機能停止しています。このままでは日本社会が成り立たなくなってしまうでしょう。これまでとは全く違う社会保障を考える必要があります。

 2013年8月に、社会保障制度改革国民会議が最終報告を出しました。第18代慶應義塾長で経済学者の清家篤氏が会長を務めていました。最終報告書は無難な内容になっていますが、それでも清家会長の意思が貫徹しており、今までになかったことが主張されています。年金・医療・介護の他に、子育て・教育・雇用を社会保障に組み込むべき時代が来たというのです。これは清家氏の強烈な自説ですが、私は非常に適切な見解だと思います。


●潜在的待機児童は数十万人にも上る


 まず育児について考えましょう。今や、もっぱら育児に時間を費やす専業主婦は、主婦の中でも3分の1しかいません。多くの主婦は、何らかの仕事で所得を得ないと、生活を維持できなくなっています。仕事をしている時間に育児を支える保育や放課後の見守りといった、社会的なサービスがなければ、子育て中の世帯を支えることができない社会になってしまいました。

 特に放課後の見守りは、ものすごく重要です。保育園に入れておけば目が届きますが、小学校低学年は午後2時くらいには授業が終わってしまいます。親が帰ってくるまでの間に、交通事故や犯罪に巻き込まれるのではないかと、親は気が気ではありません。昔は、近所に雷おやじなどがいて、面倒を見てくれましたが、今の日本にそんな人はいません。社会として子どもの面倒を見なければいけません。しかし、こうした視点が日本の社会保障には全く欠落してきました。

 現在、保育園の拡充が政策的に行われています。しかし、拡充しても拡充しても、なお数万人の待機児童がいるというのです。専門家によれば、潜在的待機児童は数十万人にも上る可能性があります。現在、新生児は年間でおよそ100万人です。保育にかかる年代は、生後3年間です。したがって、要保育の子どもは300万人ほどいることになります。そのうち1割か2割の子どもたちは、保育所に入れないという状況なのです。潜在的待機児童を解消できるほど、十分に保育施設をつくる必要があります。


●子どもの相対的貧困率は16パーセント


 次に、教育です。...
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